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せめて、今夜だけ…
第13章 明けの明星、宵の明星
さっさとこの話題を終わらせたい。
今の俺にこの質問は余りにも酷だ。
まるで、魚月への気持ちを自分自身で否定したみたいで苦しい。
隠さなきゃならない関係だとわかっていても、だ。

しかし、何だって先輩はそんなにしつこく俺の恋愛事情を知りたがるんだ?
俺をあっさりとフッた事に対して、少しばかりの罪悪感を感じてるとか?
15年前のあんな出来事、こちらはとうに吹っ切れている。

「先輩?」

黙りこくってしまった先輩。
俺、何か…、気に触る事でも言っちゃったか?

「あの…」
「…………っ!」





――――――――っ!!




いきなり、俺の心臓が物凄い早さで脈打ち出した。

「ちょっ…!!」

このままでは先輩に聞こえてしまうのではないかと言うぐらいに。

それもそのはず。
さっきまで俺の傍らでカーペットに座り込んでいた先輩の体は、今俺の胸元にあるのだから。
俺より下の位置にいた先輩は、下から俺を抱き締めるように俺に抱き付いて来ていたのだ。

「せ、先輩…っ!?」

いきなりの出来事に頭が付いていかない。
まだ熱が上がりそうだ…。
頭は痛いし、目の前がくらくらする。
眩暈で今にもぶっ倒れそうだ。
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