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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
やつれた…?
自分では自覚はないが、桐谷から見てそう見えているならやつれたのかも知れないな。
ここ最近はいろいろあってマトモに食べていないし眠れてもいない。
体重計にすら乗ってないな。

「そうか?」
「そうだよ。無理してでももっと食えよ」

ズルズルといい音をたてながら、桐谷は美味そうに蕎麦を平らげて行く。
桐谷が満腹になってるならそれでいいが。
俺の変わりに市原グループとの契約を進めてくれて、こうやって俺の心配までしてくれて…。
少々女好きなところが目に余るが、今回の事で俺は桐谷を見直し―――――。


「にしても、市原社長の秘書、すっげぇ美人だな!女優の北◯景子に似てね?お前、あの秘書さんとどういう関係なの?バツイチとか言ってたけど、彼氏とかいんのかな?今度紹介してくんね?俺バツイチでも全然オッケーだからさ!あ、合コンでもいいぞ?その為にも早く元気になってくれよ!」

ニコニコと笑い物凄い勢いで話し出した。

前言撤回…っ!
やっぱり風間先輩が目的かよ…。

思わず握り締めていた割り箸を握力だけで真っ二つに折ってしまうところだった。
先輩は桐谷に、俺との関係を話してはいないようだな。
ま、そっちの方が有難い。
学生時代の元彼元カノなんて話しをしたら、こいつまたギャーギャーうるせぇしな。


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