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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
「魚塚、お先に~」
「あぁ」

俺の脇をすり抜けて、桐谷はウキウキしながら帰宅。
やけに楽しそうだが、まさかあいつ、今日も合コンか?
いつもなら必ずと言っていいほど飲みに誘うのにな。
ま、病み上がりの人間を誘うほどあいつも無神経じゃなかったと言うことか。

鞄に資料を詰め終え、俺も帰ろうかと思った矢先。


―――ブー…、ブー…、ブー…


スーツの内ポケットに入れてあるスマホが振動しだす。
この振動パターンからしてメールではなく着信だ。

「?」

俺は歩きながら内ポケットの中のスマホに手を伸ばす。
もしかして、他の女からの着信か?
飲みに行こうとか、久しぶりに遊ぼうという誘いの電話か?

魚月と知り合ってから、もうずいぶん女とは遊んでない。
そんな気にもなれない。
それに今は病み上がり。
体もまだ本調子じゃないし、遊ぶ気にはなれそうにないな。


それに…、どうせ魚月からの着信ではないだろうし。
この3日間、魚月からの連絡はなかった。
当然と言えば当然だな。
魚月から俺に連絡をしてくるなんて、どう考えたって有り得ない。


少しの面倒さを感じながらスマホの画面に目をやると、そこに表示されていた名前は




―――――【風間先輩】








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