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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
――――「本当にありがとう!前から来てみたいと思ってたのよね!」
「はぁ…」
何だって俺は先輩と一緒に居酒屋なんて来てるんだ?
先輩からのお願い。
それは、前から来たいと思っていたこの居酒屋に付き合えとの事。
ここはBijouxの近くにある、よくある大衆居酒屋。
看病のお礼がこんな居酒屋でいいのだろうか?
「ここの焼き鳥が凄く美味しいって評判らしくて。1度来てみたかったんだけど、女1人で入るのは気が引けちゃって」
座敷に通された俺と先輩。
先輩は早速ビールと焼き鳥数本を注文。
ねぎまをもぐもぐと食べながら満足そうにしている。
確かに、こんな昔ながらの居酒屋に先輩のような女性が1人で来るのは気が引けてしまうだろうな。
店内には焼き鳥を焼いた煙が充満している。
本調子じゃない俺の食欲まで刺激されてしまうぐらいだ。
お陰で俺までビールを注文してしまった…。
「俺なんか誘わなくても他に一緒に来てくれる人はいるでしょ?」
「全然!会社の男共には敬遠されてるし、女子からも厳し過ぎるって嫌われてるし」
あぁ、自分より優れてる女は嫌って事か。
どこの会社にもいるんだな。
つーか、あんな事があった後だし、先輩とは仕事以外では距離を取ろうかとも考えたのに、何やってんだか、俺は。
でも、さすがに世話になったのは事実だし、これぐらいのお礼はしてもいいだろう。