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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
そう言えば俺も、長らくこう言う店には来てなかったな。
いつもバーやラウンジで飲んでばっかだったし、たまにはこう言う店も悪くないな。
出されたビールをグイッと飲んだ。
この季節でも、やはりグラスからキンキンに冷えてるビールは美味いな。
病み上がりだし、今日は持ち帰りの仕事で遅くなりそうだし、明日の朝が辛いだろうけど。

「そう言えば、ホテル事業の方は上手く行きそうなんですか?」
「やぁね!せっかくのお酒の場なんだから、今日は仕事の話しは抜き~」

頬を赤く染めた先輩はケラケラと笑いながら焼き鳥を頬張り続けている。
まだビールも一杯目だというのに。
もしかして、先輩って酒乱の家でもあるのか?

それから俺達はいろんな話をした。
お互いにどんな人生を歩んで来たのか。
それはまるで、離れてた時間を埋めるかのような作業。

それでも、俺は魚月の事は口にしなかった。
もちろん、魚月に会うまでの悪行の数々も口にはしていない。
ただただ、先輩の愚痴に付き合ってるような時間だ。

先輩も…、これまでの元彼の話しは聞かせてくれたが、この間の話題には触れてこない。
あの日、俺を抱き締めた事は…。

市原グループとの契約が上手く行った事に関しては俺も安心だ。
これでうちの会社もしばらくは安泰だな。




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