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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
こんな時間に、男と女が腕を組みながら歩いていたら誤解されても仕方ない。
だが、何で寄りによってBijouxの人間じゃなく翔太や魚月に見られてしまうんだよ…っ。

己の運のなさに呆れてしまう。
今になって、さっきのビールの酔いが全身に回ったみたいで気持ち悪い。

「それじゃ、僕達はここで」
「はい。お気をつけて」

翔太と先輩は他にいろいろと話していたみたいだが、俺の耳には何も入って来なかった。
ただ、この状況が嫌で、今すぐにでも逃げ出したくて…。
魚月とはマトモに顔も合わせられなかった。
魚月も、こちらを見ようともしなかった。

翔太達と別れた後も、俺はしばらく放心状態のまま。
まさかこんな現場を見られてしまうなんて…。
驚きと動揺のあまり何も話せなかったな。
翔太に怪しまれてなければいいが。

「いいよね~、若い人は。これからデートなんて」



…あ。
また俺の中のドス黒いものが暴れようとしている。
でも今日は、酒のせいか?それとも、風邪がぶり返したのか?病み上がりの体にアルコールを流し込ませたせいか?

とにかく、吐きそうだ。
気持ち悪い…。

「お似合い、なんて言われちゃったね!」

先輩の声すら、神経を逆撫でされてるみたいにイライラする。
頭に響くみたいな不快感。

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