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せめて、今夜だけ…
第3章 人魚
「すいません、ママが戻って来るまで少しだけお邪魔しますね」
俺の目の前に立った1人の女性。
「初めまして」
とりあえず、俺もニコリと笑みを返した。

ピンクのドレスを着て、胸元まで茶髪のサラサラの髪の毛。
20代ぐらいの若い女性だ。

「お客様、このお店は初めてですか?」
「えぇ、まぁ。ここのお店の名前が気になって」
「あぁ、やっぱり!」

ん?やっぱり?
やっぱりって何だ?
確かにフランス語を使ってて珍しいとは思うが、やっぱりと納得出来るような理由か?

「や、やっぱり?」
不思議に思いそう聞き返すと

「だって、お客様の名前にも"魚"が入ってるから」

先程、ママが付けてくれたネームプレートに俺の名字が書かれていた。
そこには俺の名前の"魚塚"の文字が。
この子はこれを見て「やっぱり」と思ったのか。

…なかなか、面白い事を言う女だな。

意表を突かれたその発想に思わずクスリと笑ってしまった。

「違うんですか?」
確かに、面白い発想だとは思うが、残念ながら外れだ。

「俺の会社の名前もフランス語を使ってるから、ちょっとした親近感」
「そうなんですか?珍しいですね。何てお名前の会社ですか?」

そう聞かれて、俺は一瞬戸惑った。




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