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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
バカだな、俺は…。
こうなることぐらい予想出来たはずなのに。
相手がいる女を好きになるということは、簡単に言えばこういうことだ。
嫉妬で自分を抑え切れなくなってしまう手を。

「情けねー…」

吐いちまうほどにショックを受けてるのに、それでも魚月を手放せない。
魚月を失ったら、きっと今より酷くなるな。
何も食べれない、眠れない…、俺は壊れてしまう。
今でも充分壊れてるのに…。
その狂気で、何度も何度も魚月を傷つけてるというのに…。


手と顔を洗いトイレに出ると、先輩は水を買ってくれていたようでそれを俺に手渡してくれた。

「大丈夫だった?」
「……はい。すいません…」
「とりあえず、出よっか」

先輩に促されるまま、俺と先輩はコンビニから一旦外に出た。
はぁ…、今日はお礼のつもりだったのに、まさかまた先輩に介抱されることになるなんて…。
どこまで先輩に迷惑をかければ気がすむんだよ。

外に出ると、先程と同じ冷たい風が吹き抜けていく。
酔いも覚めてしまいそうだが、俺の中の狂気は消えて等くれない。

「まさか魚塚君、お酒が飲めない人?」
「そういうわけじゃないんですけどね…」

お酒のせいじゃない。
俺が今、吐き気を催したのは酒のせいだけじゃない。
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