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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
社長秘書にまで登り詰めたんだ。
不倫で離婚…、そんな事が周りにバレたら、またあることないこと言われるのは目に見えてる。
女性の口からそんな事実は言えない、か。

しかし、何故先輩はそんな話しを俺に?
俺なら話しても問題ないと思ったのか?

「そんな辛いことが…」

重い頭を上げて先輩の方へ視線を向けると…。





―――――――っ!?










先輩は、意味深な目で俺を見つめている。
さっきまでの先輩とは違う目付きで。
その瞳は、全てを見透かしてるかのよう。



「あ…っ」




先輩…、まさか…。
まさか、気付いて――――――。





何も言わずに俺を見つめる先輩。
その瞳に見つめられると、何も言えなくなってしまう。
心臓だけがうるさいぐらいに高鳴っている。

「女の勘って、当たるのよ…」
「………っ」
「魚月さんとは古い友人なんだっけ…?」




先輩は、きっと何もかも気付いてる…。
元旦那の不倫に気付いた先輩なら、俺の気持ちを読み取るなんて容易い事だろう。

「…………は、はは」



…参ったな。

今更、どんな言い訳をしても無駄だ。
自然と笑いが込み上げて来てしまう。
先輩から目を反らした。
この瞳は苦手だ。
女の瞳というやつには男を黙らせる魔力でもあるのだろうか?



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