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せめて、今夜だけ…
第14章 火花
好きにすればいい。
破滅願望にも似た想いが俺を突き動かす。
先輩に口止めするつもりもないし言い訳をするつもりもない。

「今日は帰ります。持ち帰りの仕事もありますから」

これ以上先輩といても話すことなんか何もない。
俺の気持ちはもう打ち明けてしまった。

さっきまで先輩を送り届けようと思っていたのに。
今の俺はただの負け犬だ。
自分から気持ちを打ち明けたのに、先輩のお説教や小言がうるさくて逃げ帰ろうとしている負け犬。

「水、ご馳走さまです」

先輩の方を見ずに歩き出した。
とりあえず、今は先輩から離れなくては。
自棄になってる今、言葉のナイフで先輩を傷つけ兼ねない。
正論をぶつける先輩に逆ギレし兼ねない。
先輩は、俺のことを思って忠告してくれてるのに。

先輩から離れようと2、3歩ほど足を進ませたその時。


「……待って!」


背後から先輩の声が聞こえた。
俺を引き止める先輩の声。

「…………。」

その声に反応して俺の足の動きが止まった。
でも、先輩の方を振り返る事が出来ない。
顔を見たらまた説教が始まりそうな気がした。

「まだ何か用ですか?」

多分、先輩は呆れてる。
道徳に反した最低な事をしているというのは百も承知。
なのに、まるで善人のように開き直ってるのだから。




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