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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
いつもと変わらない朝、いつもと変わらない日常。
今日もこうして、何も変わらない1日が始まる。
変わったのは俺の回りの状況だけ。
俺の中の恋心だけ。
毎日毎日、魚月の事を思うだけで変化していく。
そして、それは濃くなったり淡くなったりを繰り返す。
それが色鮮やかに変化する日なんて俺に訪れるのだろうか?



「あー、それと…、今回市原グループのホテル事業に我が社が加わる事になったのは知ってると思うが…」

「………っ」



市原グループ…。
その名前を聞くだけで俺の心はドキッとしてしまう。
部長の口から市原グループの名前が出たが…、何か問題でもあったのか?

…まさか、昨夜の事が先輩の口から社長の耳に入って契約を打ち切るなんて事になったんじゃ…?




ドクンッ、ドクンッ…。




いくらバレてしまった勢いとは言え会社や仕事の事を深く考えずに暴露してしまった。
今になって後悔してももう遅いが…。
ここに来て俺は自分のやってしまった事の重大さを思い知った。
俺の身はどうなってもいいが、会社の事まで考えられなかった俺の落ち度だ。

嫌な汗が身体中から吹き出る。
経っているのがやっとの状況。





「その市原グループの社長から今朝連絡があったんだが…」




市原グループの社長から直々に連絡?
さすがにもう逃げれないか…。


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