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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
「実は、市原社長のご子息の翔太さんが…」




静かに目を閉じた俺は覚悟を決めた。
この会社とも桐谷ともお別れ、か。














「御婚約者の女性と、近々正式に結婚されるそうだ」



















……え?
正式に、結婚…?

















結婚…?















周りからは拍手が起こっている。
だけど、俺は…。
















目の前が霞む。
立っていられない。















「へぇ。めでてぇなぁ。な、魚塚」


頭が痛い…。
気持ち悪い…。

桐谷の声は聞こえているのに、思考が付いていかない。


「式の日取りはまだ決まってないそうだが、一応我が社からも何かお祝いをしようと思う」

得意気に話す部長。
沸き起こる拍手。
俺だけが取り残されたみたいだ。

「我が社とは長い付き合いになりそうだからと、ご丁寧に知らせてくれたんだが。うちの部署からも代表で式に参列を…」







結婚?
魚月が…、翔太と…?

何を落ち込んでるんだ俺は?
婚約しているのだからいつかは正式に籍を入れる日が来る。
そんなのわかりきってた事だ。

なのに、何で俺はこんなに…。


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