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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
『だって…、当たり前じゃないですか…。私と翔太さんは婚約してるんです。行く行くは結婚する仲なんです』

魚月が言ってる事は至極正論。
俺が勝手に1人であたふたしてるだけに過ぎない。
魚月に当たる理由なんて露ほどもないのだ。
だけど、止められない。
俺の中の常識や理性が崩壊して行く。

「だからって…。お前…っ」

言いたいことが纏まらない。
魚月の冷静な声で正論を並べられては太刀打ちなんて出来やしない。

『何が言いたいんですか…?』



魚月の声が、俺を撥ね付ける。
暗に「黙れ」と言われてるみたいで…。
俺は魚月の人生には関係ない邪魔者だと言われてるような気がして…。





冷たい風が俺の身体を冷やしていく。
来るべき時が来たのだと痛感する。
こんな恋、長く続くはずがないとわかっていたのに…。










「魚月…」
『はい』









思えば、俺が勝手に魚月に惚れて、ムリヤリ魚月を抱いて
魚月を困らせて来たのだ。
もう…、魚月を自由にしてやらなければならない。
こんな関係を続けていたら、いつかは翔太にもバレてしまう。

「今まで…、悪かった…」
『………。』

嫌がる魚月をムリヤリ自分のものにした。
泣きじゃくる魚月の気持ちを無視して自分の気持ちだけを押し付けて来た。
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