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せめて、今夜だけ…
第3章 人魚
その後、ママは戻ってくる気配がなく
俺も一頻りウイスキーを楽しんだところで切り上げる事にした。
ママと魚月に引き止められたが、明日も早いという俺の気持ちを察してくれた。
会計を済ませ俺のボトルもキープして、後はタクシーで自宅に帰るだけとなった。
今日は平日だし、思いの外タクシーも早めに捕まった。
外に出ると、外の空気はより一層冷たさを増していた。
空気は澄んでいて気持ちいいが、この寒さで酔いまで覚めてしまいそうだ。
「ありがとうございました」
タクシーが待つ通りまで魚月が俺を見送ってくれるようだ。
どうやらママは他の客に捕まってるみたいだし。
「よかったらまたいらして下さい」
「あぁ」
店内の雰囲気は気に入ったし、ここならまた来てもいいな。
冷たい空気に晒され、酔いが覚めかけた頭でぼんやりそんな事を考えていた。
―――――でも、この魚月という女。
さっきは店内の薄暗い照明でわかりにくかったけど、月明かりの下で見たら結構可愛い。
笑った時の表情が柔らかいし、髪もサラサラで思わず触って見たくなる。
あー、ダメだな、俺。
普段でもダメなのに、酒を呑むと悪い虫が騒ぎだす。
ま、今日はいい気分だし、たまには大胆に誘うのも悪くないな。