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せめて、今夜だけ…
第3章 人魚
「魚月ちゃん、だっけ?」
「はい?」
時刻は夜中の0時を回った。
いくらこの街が眠らない街とは言え、平日の0時を回れば人通りも少なくなる。
タクシーまではまだまだ距離がある。
「何でこの仕事を?」
「え?」
こんな若い子が水商売をする理由なんて1つ。
やっぱ短時間で大金が手に入るからだろ?
だったら…
「何か欲しいものでもあるとか?」
魚月の方を向き直し、魚月にそう詰め寄る。
「な、何ですか、急に?」
この仕事は、どんな客が来ても笑顔で対応しなくちゃなんないもんな。
まぁ、大変だろうなとは思うけど…。
「俺で良ければ力になるよ?魚月ちゃんだって、いい思いが出来るし」
普段なら女からの逆ナンは断らない。
でも、こちらから仕掛けるならそれなりのものをちらつかせる。
お互いいい思いが出来るのだからwin-win、一石二鳥だ。
悪いけど、世の中ってそんなもんだろ?
金や権力やルックスや、人より秀でたものがあるなら、それを使って美味しい思いを―――――
――――――パンッ!
……なっ。
魚月の頬に伸ばした手は、魚月の手に寄って思い切り振り払われてしまった。