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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
「あの2人はいずれこうなる運命。魚塚君の出る幕じゃないの」

昨夜の先輩とはうって変わって冷静な声。
魚月と言い先輩と言い、女性の切り返しの早さには感服する。

「よく俺がここにいると…」
「あー、これも女の勘。ここなら誰にも見つからず電話も出来るしね」

電話…。
ってことは、魚月との会話は聞かれてたという訳か。
先輩には昨日の時点でバレてる訳だし、今更隠すつもりもない。
無様な俺の姿を笑いにでも来たのだろうか?
フラレてしまって残念でした、とでも。

「あー、もしかして、先輩の仕業ですか?」
「何が?」

強がりから、それとも負け惜しみか
俺の口からは八つ当たりのような暴言が飛び出して来る。

「いきなり結婚なんて可笑しいと思ったんですよ。先輩が翔太の野郎に入れ知恵でもしたんですか?」

俺との関係を知った翔太が結婚を急いだ、そう思ってしまうような展開の早さ。
俺と魚月の関係を知ってるのは先輩しかいない。

「はぁ?そんな訳ないじゃない。そうなったら魚塚君と知り合いの私だって加担したと思われ兼ねないでしょ?」

確かにそうだ…。
それに先輩の態度からして嘘をついてるようには見えない。
じゃあやはり、翔太が結婚を決意しただけの話しか。

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