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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
「はは…っ。だっせぇ、俺…」

勝手に好きになって、見事にフラレて
俺を好きだと言ってくれた先輩の前で無様に泣いて…。
いつもそうだ。
俺の恋愛はいつも上手く行かない。

「笑ってくれていいですよ~。ダサすぎて自分でも笑えて来ます!」

自棄になってるな、俺。
散々女を弄んで来た俺が、まさか1人の女に入れ込んでフラレるなんて。
今まで弄んで来た女が知ったら、ここぞとばかりに嘲笑うだろうな。

「目を覚ましてよ…っ!何でわざわざそんな辛い恋を選ぶのよっ!」



辛い恋…?
あぁ、確かにそうだな。
魚月は結婚してしまう。
永遠に叶うことのない片思い。
堂々と、誰かに打ち明ける事も出来ない恋。
誰にも応援されず、ただの陰の存在。

辛い…?


いや、辛い事ばかりじゃなかった。
人に言えばバカにされるかも知れない。
攻められるかも知れない。
それでも俺には幸せな時間だった。
幸せだと、そう思えた瞬間もあった。

それを全部、辛かったで済ませたくない。




「それを…、この期に及んで最後に食事っ!?馬鹿としか言いようがないわよっ!!」

…やっぱり、さっきの魚月との会話は聞かれていたのか。
ま、あんだけ大声で話せば嫌でも聞こえてしまうよな。


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