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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
「ご忠告、ありがとうございます。でも…」
「……?」

この恋に火をつけたのは俺だ。
だから、この始末も自分でするしかないのだ。




「俺の気持ちは、俺自身で決着を付けます」




「………っ!」





誰に何かを言われて諦められる恋じゃなかった。
魚月を泣かせてばかりで、それでもいいとさえ思ったそんな自分勝手な恋だったけど、後悔なんかしていない。

先輩の横を通り抜けて俺は屋上を後にした。



部署に戻らねぇと。
これだけ席を外してしまったんだから部長に怒られるな。
それなりの言い訳を考えないと。
でも、その前にまずトイレに行かないと。
涙で腫れた目を何とかしないと。



先輩の前で無様に泣く訳にはいかない。
今夜は魚月と会う最後の夜だ。
残業にならないように仕事を終わらせないと。

今夜は…、ちゃんと魚月に別れを切り出さないといけないのだから。





先輩の気持ちは痛いほどわかってる。
辛い恋は俺の専売特許だ。






部署に戻ると予想通り部長に大目玉を食らった。
桐谷には何があったのかと詰め寄られたが、腹を壊したとか何とか適当な嘘で場を凌いだ。
女にフラレて落ち込んでいたなんて口が裂けても言える訳がない。

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