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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
それから大急ぎで仕事を片付け、昼休み返上で午後も必死に仕事に打ち込んだ。
その甲斐あってか何とか残業にならずには済んだ。

時計を見るたびに、当たり前だが時間は過ぎていく。
魚月に会いたい…、早く仕事を終えたい反面
魚月に会うのは今日が最後だと思うと、時間が止まればいいとさえ思う。

どっちにしても魚月は結婚してしまう。
魚月に会うのは今日が最後。
時間がくれば魚月に別れを告げられてしまう。
今度こそ本当に…、魚月を失う。


――――「お疲れ~。じゃあな、魚塚」
「あぁ」


定時になると、部署の人間は次々と帰って行く。
俺も急いで帰り支度を済ませる。
もうすぐ約束の時間。
帰って支度をして魚月と待ち合わせをしているレストランに向かわなくてはならない。

「冷え込むと思ったら、降って来たな~」

帰ろうとしている同僚達が不意に窓の方へと目をやると…



「あぁ、雪か…」



外はいつの間にか雪模様だった。
しんしんと静かに雪が降りだしていたのだ。

「この調子だと明日には積もるかもな」
「だな。さっさと帰ろうぜ。電車が止まったら洒落になんねぇわ」

同僚達は騒ぎながら家路を急ぎだした。
確かに、外の雪は大粒だし吹雪のように降り出している。
これなら明日の朝には積もってるかもな。



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