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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
タクシーを走らせて付いたのは、とある高層ビルのホテル。
この高級ホテルの中にあるレストランで待ち合わせている。
最後の夜くらいは…、そう思って予約をしておいた。
いつもなら予約でいっぱいで席なんて取れないが、今夜はまるで用意されていたかのようにスムーズに予約が出来た。
ここのホテルとレストランの売りは何と言っても夜景と海が綺麗な事。
海に面しているせいか微かに風に交じって潮の香りが漂って来る。

しかし、せっかくの海も夜景も、この天気では期待出来そうにない。
タクシーから降りた今も雪は降り続いている。



ホテルに入ると感じのいいベルボーイ達が俺を出迎えてくれる。
さすが、一流の高級ホテルなだけはある。
腕時計を見ると…、待ち合わせの時間ぴったりに到着出来そうだが…、魚月はもう到着しているのだろうか?



エレベーターに乗りホテルがある階まで一気に昇って行く。
それと同じように俺の心臓も早くなって行く。
これはデートだがデートじゃない。
最後の夜だ。
最後の夜というのに、随分と見栄を張ったものだと自分でもそう思う。



いつか…、魚月に呼び出されたビジネスホテルでも同じことがあった。
あの時もこんな風に胸を高鳴らせていたな。



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