この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
「こちらでございます」
「………っ」
通されたのは窓際の、海が1番良く見える席。
予約の電話を入れた時「海が見える席」とは伝えて置いたが、確かに海は良く見える位置ではある。
「ごゆっくりと」
そう言って俺に一礼した後にボーイは立ち去った。
確かに窓際の席で、雪で曇ってはいるが海も、その向こうの夜景もよく見える。
しかし、俺の瞳に映ってるのは、海でも夜景でもない。
俺より先に到着し、先に席に付きながら景色を眺めている女性…。
「魚月…」
予約していた席に先に座っていたのは魚月だった。
名前を呼ぶと魚月はゆっくりと振り返った。
「こんばんわ」
真っ赤なマーメイドドレス、髪もアップヘアーで、憂いを帯びたような気怠い瞳。
テーブルの淡いキャンドルの炎に照らし出された魚月の姿。
いつもの柔らかな雰囲気と違って今夜の魚月は一段と美しかった。
「待たせたな…」
「いえ。ついさっき着いたところです」
見栄を張って冷静を装うが、俺の心臓は今にも壊れそうだった。
怖くて、辛くて、でも今夜の魚月はとても可愛くて、愛しくて
俺より先に俺の心臓が泣き出しそうだ。
「………っ」
通されたのは窓際の、海が1番良く見える席。
予約の電話を入れた時「海が見える席」とは伝えて置いたが、確かに海は良く見える位置ではある。
「ごゆっくりと」
そう言って俺に一礼した後にボーイは立ち去った。
確かに窓際の席で、雪で曇ってはいるが海も、その向こうの夜景もよく見える。
しかし、俺の瞳に映ってるのは、海でも夜景でもない。
俺より先に到着し、先に席に付きながら景色を眺めている女性…。
「魚月…」
予約していた席に先に座っていたのは魚月だった。
名前を呼ぶと魚月はゆっくりと振り返った。
「こんばんわ」
真っ赤なマーメイドドレス、髪もアップヘアーで、憂いを帯びたような気怠い瞳。
テーブルの淡いキャンドルの炎に照らし出された魚月の姿。
いつもの柔らかな雰囲気と違って今夜の魚月は一段と美しかった。
「待たせたな…」
「いえ。ついさっき着いたところです」
見栄を張って冷静を装うが、俺の心臓は今にも壊れそうだった。
怖くて、辛くて、でも今夜の魚月はとても可愛くて、愛しくて
俺より先に俺の心臓が泣き出しそうだ。