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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
「だったら何で腕なんか…」
「成り行きと言うか…、先輩も酔ってたし。それ以上の関係じゃねぇよ…」

無様な言い訳をしながら魚月に1つずつ説明して行く。
俺と先輩の間には何もない事を。
俺は先輩の事を恋愛対象としては見てないということを。

「私には…、あんな酷いことをした癖に…」
「お前は誰かのものになるって、そう思ったらもう自制が効かなくなった…。つまんねぇ嫉妬だ…」

魚月に触れる時はいつも、翔太の顔がちらいていた。
それを払拭するように魚月に乱暴なことばかりしていた。
ガキみたいな嫉妬で、魚月には辛い目に遇わせてしまった。
大人げないぐらいに嫉妬して、自制が効かないぐらいに好きになってしまった。

「そんな…」

呆れて笑えて来るな。
自分で思い返しても、バカみたいな自分に笑えて来る。
最後の最後まで魚月を困らせてしまった。


「だって…、安西さんと先輩が付き合ってるって思ったから、私…」
「え…?」






小さく震え出す魚月。
焦ってるかのような、不安を抱えてるような血の気のひいた表情で。
只ならない魚月の様子。

「魚月…?」






「だから…、翔太さんとの結婚を急いだのに…っ」














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