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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
「――――――な…っ!?」
それは、俺にとっては晴天の霹靂。
まさか魚月は…、俺と先輩の関係を誤解して結婚を…?
「ちょっと待てよ…。何だよそれ…っ」
俺と先輩が?
だから誤解して結婚を急いだ?
何が何だか訳がわからない。
魚月にとって俺は邪魔な存在。
そんな男が別の女性とどうなろうがどうでもいい事じゃないか?
なのに、何で今になってそんな話しを俺に…?
「どういう事だよ…、魚月っ!」
思わず大声で魚月に問い質してしまった。
魚月のその話しが俺を惑わして行く。
溢れだした気持ちが暴れだす。
魚月はばつの悪そうな顔で俺から目線を反らしていたが…
「だ、だって…」
俺と先輩の仲を誤解して、それで翔太との結婚を急いだ、と。
それって…、いや、でもそれは…。
そんなはずない…っ。
だって、そんな訳がないっ!
必死で俺の中に浮かんだ考えを消し去ろうとしたが、その考えは俺の頭の中を埋めて行く。
そんな嬉しい考えを…。
「だって…――――――」
そんな、幸せな事…、有り得ない…っ!
「私だって…、魚塚さんが――――――っ!」
魚月の口から出たその言葉…。
さっきまで感じていた寒さや悲しさがなくなって行く。
頭の中が…、真っ白になって行く。