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せめて、今夜だけ…
第16章 泡沫に泳ぐ魚
――――――――…っ。
柔らかく笑った魚月の口から発せられたそのフレーズ。
翔太にじゃなく、俺にだけ向けられたその言葉は…
俺の中の理性や常識を破壊するには充分過ぎるほどのものだった。
「―――――っ!」
魚月のドレスも、髪の毛も、ぐちゃぐちゃに乱したい、引き裂いてしまいたい。
そんな勢いで魚月のドレスに手をかけて脱がして行く。
ひんやりと冷えきった魚月の体温が気持ちいい。
「ん…っ」
ドレスを脱がし、ストッキングも脱がし、あらわになった下着も惜しげもなく脱がせて行く。
途中、何度か魚月が俺を制止させようとしたが、今夜も魚月に優しくしてやれそうにない。
「やだ…、恥ずかしい…」
恥ずかしがる魚月の仕草が余計に俺を煽る。
わざとやってるんじゃねぇだろうな…。
何もかもを脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になった魚月に俺の視線は戸惑ってしまう。
2回目だと言うのに…、情けない。
今夜は…、魚月は翔太のもんじゃない。
俺のものだ。
叶わない恋なのに…。
どうせ何時間後には他人に戻らなきゃいけないのに…。
なのに、お互いの気持ちを確認するかのようなこの行為は、まさに愚行の極みだ。
なのに、今夜だけはと願ってしまう。
最後だけは、魚月は俺のものだと思いたい。