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せめて、今夜だけ…
第16章 泡沫に泳ぐ魚
魚月の幸せを願ってる?
幸せになれ?
誰よりも幸せに?
そんなもの全部綺麗事だ。
「俺の…、俺のものでいて欲しかった…っ!俺のものにしたかった…っ!!」
離れたくなんかなかった…。
翔太になんか渡したくなかった…。
翔太だけじゃなく誰にも渡したくなかった…っ!
俺が幸せにしたかった…。
どんな事をしてでも、俺だけのそばにいて欲しかった…っ。
例えそれが愛じゃないというならそれでもいい。
そんな綺麗なものが愛というなら、そんなもの欲しくなかったのに…。
「魚月…っ」
地面についた手の平に涙が零れ落ちていく。
そんな俺を嘲笑うかのように、俺の体には雪が舞い落ちていく。
でも、どんなに抗っても、どんなに嘆いても、魚月はもういない。
もう2度と、魚月を―――――…っ。
その場に崩れた俺を避けるように、俺の周りには人気がなくなっていく。
酔っ払いと思われたのか誰もが俺を避けていく。
1人で泣くにはちょうどいい。
しかし、そんな俺の目の前に…。
―――――「風邪ひくわよ…」
俺の目の前に、ヒールの爪先が現れた。
と同時に、俺の体に舞っていた雪が止んだ…。