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せめて、今夜だけ…
第17章 人魚が残した猛毒
先輩はいつも、俺に気を使わせない為にタクシーを呼んで自宅に帰っている。
先輩が帰る時間はいつもバラバラ。
深夜は危ないから送ると言っても送らせてくれない。
せめてタクシー代をと思うがそれも受け取ってくれない。
俺に気を使わせない為だ。

いつまでも先輩の優しさに甘えてはいけないと思いつつ、ずるずるとこんな関係を続けて来た。

とりあえず、明日は先輩にメッセージでも送っとかないとな。
今夜の軽食のお礼と、見送れずすいませんって事と…。



ぼんやりする頭でそんな事を考えながらふらつく足取りで寝室へ向かった。
明日も仕事が山積みだ。
今日はしっかり眠らねぇとな。

でも、例え眠れても、夢の中にまで魚月が出てきてしまう。
起きたときに虚しくなるだけだ。
現実に魚月はもういないのだから―――――。

それでも、ちゃんと眠らない事には疲れが取れない。
何も考えずに泥のように眠りたい…。





キィー…。

寝室のドアをゆっくりと開けた。
真っ暗な寝室に廊下の明かりが差し込む。




明かりが差し込んだ先にはベッドがある。




「……っ!?」




そのベッドに見えた人影…。




「うわっ!!」




俺以外に誰もいないはずの寝室のベッドに誰かが腰かけていた。
暗闇のせいで輪郭が定まらずぼんやりと照らし出された人影に驚き、思わず大きな悲鳴を上げてしまった。



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