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せめて、今夜だけ…
第17章 人魚が残した猛毒
暗闇に目が慣れてないせいか先輩の表情はわからない。
が、俺もそこまで鈍感じゃない。

女性がシャワーを浴びて、ベッドで男を待っている。
こんなシチュエーション、今まで何度も経験して来たはずだ。

「……あの、俺は」
「じ、自分でもはしたないってわかってる!…でも―――――」

ベッドから立ち上がると、先輩は立ちすくむ俺の方へと駆け寄って来た。

「――――――っ」

さっきは驚きのあまりちゃんと確認しなかったが、先輩は衣類を脱ぎ去り下着姿になっていた。
下着姿のままで俺の胸に飛び込んで来たのだ。

「私の事、今は好きじゃなくてもいいの!」
「…………」



俺の胸の中で先輩は小さく震えている。
今にも泣きそうな声で…。



以前先輩に告白された事があった。
でもその時、俺は先輩の気持ちに応える事が出来なかった。
俺には魚月がいたから。
間違った関係でも、俺は魚月が好きだった。

魚月との関係を終わらせた今、俺は先輩の気持ちに応える事が出来るのだろうか。
今までその話題には触れないようにしていた。
今の関係が心地よくなって、いつしかお互いにその話題を口にすることも、追求することもなかった。

でも、今は―――――。



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