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せめて、今夜だけ…
第4章 飢餓
「お前が残業してるから、手伝おうと思って残ってたんだよ…」
「あ、あぁ、そうなのか…」
「急ぎの仕事かと思ったら、何だよこれ!」

急ぎの仕事というわけでもない。
後に回しても差し支えのない業務を前倒しで片付けてただけ。
残業するほどの仕事でもないし、桐谷が怒っても無理はないが…。

「別にお前に頼んでねぇよ…」
「何だよそれ!友達がいのない奴だな!」

つーか、桐谷がいる事全然気づかなかった。
桐谷の気配がないのか、それだけ俺が集中してたのか。

「でも珍しいな、魚塚が残業なんて。お前基本的に残業しねぇじゃん?」
「あ?そうだったか?」
「そうだよ。自分の仕事はさっさと片付けてたじゃねぇか」

椅子に腰かけながら俺に話しかける桐谷。


……嫌なことを忘れる為に仕事に打ち込んでた、なんてさすがに言えねぇな。
これじゃまるで仕事に八つ当たりしてるみてぇじゃねぇか。

「早めに片付けておいた方がいいだろう?」
「まぁ、そうだけどさ」

それらしいことを言っては見たが、そんな自分が情けない。
嫌なことを忘れる為に仕事に当たるとは、俺らしくもない。

「それよりさ、今日辺りまた飲みに行かね?今度は女抜きでさ」
「はぁ?お前と2人で?」
「そうそう。だからお前が終わるの待ってたんだぜ」



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