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せめて、今夜だけ…
第18章 彼方
周りがざわざわと騒がしい。
まさか、うちの会社が倒産なんて話題じゃねぇだろうな…。



「あぁ、俺も今聞いたところでまだ噂の段階らしいけど…」
「何だよ?」

もうすぐ部長が来る時間だ。
もしかしたらすぐそこにまで来てるかも知れない。
部長に聞かれないように声のボリュームを落としながら俺の耳のそばで話し始めた。

「前に市原グループのご子息の結婚話があっただろ?」





―――――市原グループ…。

それは、魚月の婚約者の会社。
その名前を聞いただけで魚月を思い出すなんて、マジで重症だ。
一瞬の動揺を悟られないように必死にポーカーフェイスを保った。

「あ…、あぁ、確か半年前に…」


魚月の結婚が正式に決まりうちの部署で発表された日だ。
あれから何の音沙汰もなかったが、その市原グループがどうかしたのだろうか…。

「で、市原グループがどうしたんだよ」







「何か…、婚約破棄になったらしいぞ。市原グループのご子息」














―――――――え?

婚約、破棄…?










頭の中が…、真っ白になった…。








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