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せめて、今夜だけ…
第18章 彼方
ドクンッ、ドクンッ…
婚約破棄って、何だよそれ…。
誰と誰が婚約破棄だって…?
心臓が高鳴る。
まるで身体中の血液が沸騰したように煮えたぎりだす。
桐谷のその言葉を理解しようとするが頭が付いて行かない。
ドクンッ、ドクンッ…。
「婚約の話しがあってから何の進展もないなぁって思ってたんだけど、まさか婚約破棄とはなぁ」
足が震える。
立ち上がれそうにない。
「これが本当なら市原社長も大変だよなぁ。大々的に公表しただろうし」
桐谷や他の同僚からすれば、ただの面白可笑しいスキャンダル。
でも、俺にとっては…。
「ま、女の方は社長夫人になり損ねたな。ハハッ」
――――――ガタッ!!
足に力を込めて、渾身の勢いで立ち上がった。
立ち上がった拍子に椅子がガタンッと倒れてしまいその音に驚いた連中が俺の方を振り返る。
「お、おいっ!どういう事だよ、それっ!!」
「な、なんだよ、いきなり…っ!?」
連中の振り返った先には、桐谷の両肩を掴み食って掛かる俺の姿があった。
はたから見れば一触即発の雰囲気。
だが、他の連中の視線なんか知った事ではない。