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せめて、今夜だけ…
第18章 彼方
俺は机の上の鞄を持つと、デスクの上のパソコンを片付ける事なく部署を飛び出した。
もうすぐ部長が来て朝のミーティングが始まるという時に。

「ちょっ、な、何言ってんだよ魚塚っ!?おいっ!」

引き止める桐谷の声を無視して、俺は部署を飛び出し会社からも飛び出してしまった。




婚約破棄…?
婚約破棄って、何だよ…?
どういう事だよ…っ?




頭の中ではその疑問だけがぐるぐると目まぐるしく渦巻いている。
心臓が今にも爆発しそうなぐらいに高鳴っている。

「――――――っ!」

こんな状態で仕事に集中出来るはずがない。
真相を確かめないと…、余計な感情が邪魔をして仕事になりそうにない。



婚約破棄…?
何で?
半年前、あの雪の夜、魚月は翔太と幸せになると約束した。
魚月は翔太と結婚するはずなんだ。
なのに、婚約破棄?

魚月に何かあったのか?
婚約を破棄してしまうような何かが…。
それともまさか、俺との関係が翔太にバレたのか?
いや、それなら翔太から何かしらの連絡があるはずだ。
魚月だって俺との痕跡は全て消却したはず。
俺との関係はバレようがない。
なのに、一体何がどうなったと言うんだ?


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