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せめて、今夜だけ…
第18章 彼方
コンビニの冷蔵庫の取っ手に手をかけると、中の冷気が手のひらに伝わってきた。




だが、もし、本当に…
万が一…
魚月が本当に婚約破棄になっていたら…?




万が一…
その考えが頭の片隅に残っている。
考えないようにしていた。
必死に否定していた。
婚約破棄なんかしていない、と。
だが…。




ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ




本当に婚約破棄になっているとしたら…?
何かの事情で翔太と別れていたら?

有り得ない…
有り得ねぇだろ、そんな…

「ハハッ…、マジかよ…っ」














そんな幸せな話し…っ!











―――「ありがとうございましたー」

コンビニでミネラルウォーターを買うと、渇いた喉に一気に水を注ぎ込んだ。
頭の片隅に浮かんだ"万が一"を一緒に飲み込もうと思った。


半年前の雪の夜、魚月は俺と約束した。
翔太と幸せになる、と。
もしかして、魚月がフラれたのか?
いや、まだ婚約破棄したとわかった訳じゃない。
でも、火のない所に煙は立たないとも言うし。

今すぐ魚月に聞きたいのに、魚月と連絡を取る手段がない。

いや、そんな大義名分なんかいらない。
俺はただ、今すぐ魚月に会いたい…。
この半年間、魚月を忘れた日なんかなかったんだから。
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