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せめて、今夜だけ…
第18章 彼方
第一声を発しようとするが躊躇ってしまう。
昨夜の今でこんな質問をしていいのか?とか
どうやって話しを切り出せばいいのか?とか
先輩からどんな答えが返って来るのか、等
考え出したらキリがない。

もし本当に…、噂が本当なら…。

『悪いけど、もう切るわよ?』







「先輩…、俺に何か隠してませんか?」




ストレートな質問に、俺本人が驚いてしまっている。
頭ではわかっていても、逸る気持ちを抑えられない。

こんな質問をして先輩の神経を逆撫でするだけだ。
昨夜に続いて今…、こんな失礼な質問をしてるのだから。


『は、はぁ?いきなり何よ…!話しが見えないんだけど…』
「魚月の事です」



一瞬、先輩の声に焦りが見えた。
それは確信するには怪しい違和感だが、少なくとも先輩は魚月の何かを知っている。

『いや、い、意味がわかんないんだけど…っ』
「隠さないで下さい」

矢継ぎ早にこんな質問をして、完全に先輩に嫌われてしまうな。
いや、もうそんな事はどうでもいい。
先輩に嫌われようがどうでもいい。

もし、あの噂が本当でもう1度魚月に会えるなら




世界中の人間に嫌われても怖くはない。






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