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せめて、今夜だけ…
第19章 欲心と懺悔
「はい、お待たせ」

先輩の手には注がれた2つのシャンパンが握られていた。
シュワシュワと炭酸の音をたてたゴールド色のシャンパン。

「スーパーのシャンパンだけど、多分美味しいんじゃないかな?」

楽しそうな表情で俺の目の前にシャンパンを出してくれる先輩だが…。

「あの、先輩…」
「ネットでね、結構有名なシャンパンなの。リーズナブルだし手軽に手に入るからって人気らしくって」

まるで親しい友人と酒を楽しむかのように楽しそうな先輩の笑顔。

「あ、あの…」
「まぁ、三ツ星ホテルのレストランには負けるけど」

なかなか話しを切り出せない。
俺の言葉を遮るかのような態度。
もしかして、話しをする気はないのだろうか?
昨夜の俺への仕返しなのかな?
俺が今1番気になってるのは魚月の事だ。
先輩だって、それをわかってるはずなのに。

「それじゃ、一応乾杯」
「はい」

俺の目の前に座った先輩はグラスを傾けて来た。
先輩のペースと雰囲気に流され俺もグラスを傾けた。

チンッというグラスがぶつかる音。
先輩は渇いた喉にシャンパンを流し込んだ。

「んっ、スーパーのシャンパンにしてはまぁまぁかな」

仕事で疲れてるんだろうし、シャンパン一杯ぐらいならと俺もただ黙ってシャンパンを味わった。
だけど、味なんてわかりゃしない。


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