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せめて、今夜だけ…
第19章 欲心と懺悔
つーか、さっきまでのあの張り詰めた時間は何だったんだよ。
こっちは先輩を待ってる間生きた心地がしなかったと言うのに。
はぁ…っ、と大きなため息を付くと

「ごめんね。昨夜の仕返し」

悪戯っぽく笑う先輩を見ると怒る気が失せてしまう。
ジョークにもほどがある、と一瞬カチンッとは来たが、昨夜の事を思い出すと怒るに怒れない。
先に失礼な態度を取ったのは俺の方なのだから。

「心臓に悪すぎますよ…っ」
「でも、最初に失礼な事をしたのは由之でしょ?」
「………。」

はい、仰有る通りです。

はぁ、結局魚月の事は何一つわからなかった。
魚月が今どうしてるのかも、どこにいるのかもわからなかった。
だけど、先輩の話を聞いてる限りどうやら婚約破棄の噂はデマのようだ。
もし、婚約破棄をしていたらもっと大事になってるだろう。

……ホッとしたような、ガッカリしたような。

婚約破棄をしていないなら、これで完全に魚月を吹っ切れる。
諦められる。
もう、不毛な恋をしなくてもいいのだから。

だけど、もし、本当に婚約破棄をしていたのなら
俺はまだ、魚月を想っててもいいのだから。

「とりあえず、せっかくのシャンパンなんだから、もっと呑んでよ」
「はい」

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