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せめて、今夜だけ…
第19章 欲心と懺悔
思うようにはならない。
思い通りに上手く行かないもんだな。

魚月が婚約破棄をしたなんてそんな幸運、そうそうあるわけない。
これで完全に吹っ切れる。
俺は先輩が持ってきてくれたシャンパンをグイグイと飲み干した。
先程までの緊張のせいで喉がカラカラだ。

魚月との思い出、魚月への思い、全部飲み干してやる。
全部無くなってスッキリしてしまえ。

もう若くもないのに、柄にもない自棄酒。
まぁ、いいか。
今夜は素面でいたくない。

「美味しいでしょ?おかわりする?」
「あー、じゃあ、お願いします」

先輩は空になったグラスを持ちキッチンへと向かった。
シャンパンの瓶ごとこちらに持って来てくれてもいいのにな。

「先輩は飲まないんですか?」

先輩のグラスを見ると、まだ少ししか呑んでいない。
これじゃまるで俺が先輩に絡み酒してるみたいだ。

「私はいい。由之がスッキリするまで呑めば?」


スッキリ…?
さっきまで言葉にし難い感情に振り回され続けて、ホッとした途端に自棄酒…、とことんダサい。
ダサくて情けなくて笑えてくる。

「は、はは…」




あー、何か目の前の景色が歪む…。
緊張の糸が切れてホッとしたせいか、何か…、すっげぇ眠い…。

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