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せめて、今夜だけ…
第19章 欲心と懺悔
「好きよ、由之…」

先輩の唇が俺の素肌に触れる。
暖かな吐息が肌を掠めると、くすぐったいようなもどかしい感覚が全身に走った。

「う……っ」

体は痺れてるはずなのに、何で感覚だけは残ってんだよ…っ。
どうせなら感覚もなくなってくれればよかったのに…。

「クスクス…、こんな由之は初めてね。いつもは自信過剰で偉そうな口叩いてるのに…」

下着姿のまま俺の体にまたがる先輩。
下から見上げる先輩の体。
健全な男なら生唾ものだろうけど、今はただただ腹立たしいだけだ。
先輩にも、成す術のない自分にも腹が立つ。

「どんなに抵抗したくても出来ないでしょ?いい加減諦めたら」

先輩の唇が胸元をなぞり俺の首元に移動して来る。
くすぐったいような、もどかしいような、感じたくもないのに先輩の息遣いを感じてしまう。

「抱きたいでしょ?男ですものね」
「そ、そんな訳…っ、んっ」

まるで脳までもが痺れてるみたいだ。
鼓膜に響く先輩の声が脳をとろけさせて行くみたいだ。
でも、このまま先輩に好き勝手にされたくない。
俺が欲しいのは先輩じゃない。


俺が欲しいのは…
俺が唯一抱きたいのは…―――――っ。


「強情ね。まぁ、体に聞けばわかるわね」



そう言うと、先輩は俺の下半身へと手を伸ばした。





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