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せめて、今夜だけ…
第20章 傷ついた鱗


はは…っ、ガキの頃、こんなシチュエーションに憧れたなぁって言う情けない感情。
実際にはそんな美味しいシチュエーションなんか早々起きなくて
大人になってからは好き勝手に女を取っ替え引っ替えする毎日だった。

別にいいか、このままヤラれても…。
こんなシチュエーション、滅多にないんだし。
あぁ、桐谷に言ったらあいつ羨ましがるだろな。








でも…
でも、俺は先輩じゃダメだ…っ。
何も考えないガキじゃねぇんだ…。
俺が本気でグッと来る女は
本気で抱きたい女は――――――――っ!!









――――――――――ガリッ……!







口の中に走る激痛と、口の中いっぱいに広がる鉄の味。
このまま快楽に流されないように、今の俺に出来る必死の抵抗のつもりだった。

「な…、何やってんのよっ!」
「うっ、く…っ」

俺は渾身の力を振り絞って舌を噛んだ。
身動きの取れない体に渇を入れる為でもあったんだが、仰向けに寝転んでるせいで血が喉に滴り噎せそうになった。
やっべ…、少し噛んだつもりなのに、すっげぇ出血してるかも。

「ちょっ…、早く止血しないと…っ」

俺のこの行動に流石の先輩も焦ったのか俺の体から離れた。

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