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せめて、今夜だけ…
第20章 傷ついた鱗
――――――――――――え?
先輩、今何て…?
先輩が言ったその言葉。
その言葉を理解するのに、数秒の時間を要した。
薬で思考が痺れて上手く考えれないのか、それとも俺はまだ夢を見てるのか?
ドックン、ドックン。
心臓が激しく脈打ち出す。
体が、頭が、胸が熱くなる。
「い、今、何て…」
俺の聞き間違いか?それとも幻か?幻聴か?
「魚月さんと翔太さんは本当に婚約破棄したの。あの噂は本当よ」
こちらを振り返った先輩の目は、まるで尖った刃物のように俺を突き刺した。
その瞳には、嘘は見られない。
「魚月、が…?」
「えぇ、3ヶ月前にね」
3ヶ月前?
3ヶ月前に魚月は翔太と婚約破棄をしていた?
「大々的に婚約発表しちゃってたからね。婚約破棄がバレたら周りの心証が悪くなるから、今はオフレコにしとこうって会社で決まったのよ。まさか、由之の会社で噂が流れてるなんて思わなかったけど」
じゃあ、やっぱり
婚約破棄の噂は本当だったのか?
「私はもちろん知ってたけど、婚約破棄が由之の耳に入ったら、今度こそ本当に私の出る幕はなくなっちゃうから黙ってたの」