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せめて、今夜だけ…
第4章 飢餓
俺とほぼ同じタイミングで、隣から伸びてきた手。
どうやら俺と同じ商品を取ろうとしてるようだ。

「あ、すいません…」

思わず手を引っ込めてしまった。

うわ、何だこのシチュエーション。
まるでドラマみたいな展開だが、シェービングコーナーだしな。
この人が棚から取った後で取ればいいか。
別に最後の一個というわけでもないし。

「お先にどうぞ」

そう思った時だ。



「魚塚さん?」



手の主が、俺の名前を呼んだ。
しかし、何故か妙な違和感が…。





え?今、名前を呼ばれた?
会社のやつか?
いや、でもこの声…。



名前を呼ばれた瞬間に感じた違和感。



……女の声?



伸びている手を辿って、手の主の顔へと視線を向けた。



「…………。」



茶髪の髪を横流しに結び、真っ白なTシャツにジーンズ。
赤縁の眼鏡をかけた女性。




は…?
だ、誰だ、この女。
もしかして、過去に遊んだ事のある女か?

いや、雰囲気は違うが、この女――――――



「あっ!」



思わず変な声が出てしまった。
過去に遊んだ事のある女の方がまだマシだったかも知れない。


こ、この女…、昨夜の…っ!


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