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せめて、今夜だけ…
第20章 傷ついた鱗
両手で顔を覆い俯く俺を見ながら、先輩は呆れたように笑っている。

ああ、全く、ガキみてぇだよな…。
いくら大人ぶってても、俺の中身はまだまだガキだ。
1人の女の事でこんなに一喜一憂してしまうんだからっ。

だって、もう
誰に気を使うことなく、俺は魚月を愛せる。
誰かにバレるんじゃなく、堂々と魚月を愛せる。
それがこんなにも嬉しい。



「でも、由之はこれからどうするの?」
「え?」
「いくら婚約破棄したからって魚月さんの居場所がわからないんじゃ…」




確かにそうだ。
今ある情報は魚月が婚約破棄をしたということだけ。
婚約破棄の原因も、魚月の居場所も全くわからない。
いくら喜んだところで魚月の居場所がわからない事にはどうしようもない。

「まぁ、会社で調べれば魚月さんの実家の住所もわかるだろうけど」

魚月に会って言いたいことか聞きたいことが沢山ある。
どうして婚約破棄をしたのか?
どうして婚約破棄をしたのに俺に連絡一本寄越さないのか?
俺は想いを断ち切る為に魚月の連絡先を消却したが、魚月も俺の連絡先を消却してしまったのか?



いや…
魚月の居場所なんて…



「大丈夫…」
「え…?」




「どこにいたって見つけられる…」








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