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せめて、今夜だけ…
第20章 傷ついた鱗
なぁ。
笑えるだろ?
魚月の居場所はわからない。
手がかりさえない。
なのに、根拠のない自信が湧いて来る。

魚月がどこにいたって見つけられる。
世界中、隠れる場所なんかないぐらい隈無く探し出せそうな気がしてる。
魚月を見つけてそして、今度こそ――――…。

「……呆れた」
「ありがとうございます」

ガキみてぇに喜ぶ俺を見て先輩も心底冷めた事だろう。
嬉しさが身体中に染み渡って根拠のない自信が湧いてきて、今にも外に飛び出したいぐらいだ。
舌の痛みもどこかに吹っ飛んだようだ。

「あーぁ、こんなバカな男に迫った自分が恥ずかしいわ!」

悪態を吐くと先輩は立ち上がり踵を返した。


悪態を吐いてても、先輩の背中は寂しげだが誇らしくもあった。
最後の最後は潔く身を引く、何とも先輩らしい終わり方だと思った。
俺が憧れた人。
思春期の俺が心底好きになった女性。

「すいませ…」
「何それ?まるで由之が私をフるみたいになってるじゃないっ!」

俺の方を振り返り、ソファに座る俺を見下ろしながら…

「いい?私が由之をフるの!あんたみたいなバカな男、こっちから願い下げなのよっ!あんたに私は勿体ない!!」

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