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せめて、今夜だけ…
第21章 嘘と罠
ここへ来れば何かしらの情報を得られるかもと思いやって来たはいいが…、何のプランもなくて途方にくれていたところだ。
まさか、渦中の本人が出てきてくれるなんて思っても見なかった。

「実は…、たまたまここを通りかかったものですから」
「あー、偶然ですね。僕も父に用事があったものですから」


その時、俺は思った。
これは、この上ないチャンスだと。
魚月の事を聞き出せるチャンスだ、と。
怪しまれないように当たり障りのない会話から様子を伺った。


こんなチャンス、逃してたまるかっ!


「そうですか。またお会い出来るなんて光栄です」
「ぼ、僕も、です」

このチャンスを逃したら次はない。
何とか魚月の事を聞き出さなければいけない。
その為にも、ここでこのまま取り逃がすわけにはいかないのだ。
焦りで上擦る声。

しっかりしろ俺の体。
焦りや緊張でこの期を逃す訳にはいかねぇんだよ。


「……実は、この後友人と飲むつもりだったんですが、ドタキャンされてしまって」
「あぁ、それはお気の毒に」

頭をフル回転させて、1つ1つ、パズルのピースを組み立てるように話しを運んで行く。
友人との飲みも勿論嘘だ。
怪しまれないように、ゆっくりと構想を練って行く。

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