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せめて、今夜だけ…
第22章 核心
「どうぞ。ご勝手に」
「はぁ?」

一瞬で頭の中が真っ白になった。
今まで築き上げて来た栄光や今の肩書き。
必死の思いで掴み取った出世コース。
大企業の次期社長にこんな無礼を働いてタダで済むはずがない。
身ぐるみを剥がされるかの如くBijouxをクビになるだろう。

だが、そんな事はどうでもよかった。

全てを捨てて大事なものを守り通そうとした魚月を侮辱した翔太を許せなかった。

「クビでも何でも、好きにすればいいです」
「……強がってんじゃねぇぞ?」


強がり?
んなわけねぇじゃん。
マジで会社なんかどうでもいい。
強がりじゃなく開き直りと言った方が正しいな。

開き直った俺はもう止まれなかった。
大企業の次期社長に楯突いたらどうなるかなんて、もうどうでも良かった。

「それならこちらも言って回ってあげますよ?市原グループの次期社長の乱れた異性交遊。今目の前で見せてくれた事を」

本気でもない女性に甘い言葉を囁く翔太の姿。
ま、俺が吹聴したところで翔太にとって見れば痛くも痒くもないだろう。
次期社長となれば女遊びぐらいするだろう。
それにいざとなればいつもみたいに金で揉み消すんだろう。

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