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せめて、今夜だけ…
第22章 核心
そんな魚月を侮辱し、嘲笑う資格など翔太にはない。
何もかもがどうでもいい。
会社の事も、自分の立場もどうでもいい。
クビにでも何でもなればいい。
「――――――っ!」
頭の中がむず痒い。
思い切り掻きむしりたい、モヤがかかったみたいに考えがまとまらない。
俺は足早にカフェを後にし帰路に着いた。
翔太は魚月の居場所は知らないようだ。
婚約破棄した途端に別の女とイチャつくような男だ。
元婚約者の居場所になんて興味はないだろうな。
クッソ…。
いろんな事が一気に起こりすぎて頭が回らない。
やっと魚月の居場所がわかると思ったのに、空振りかよ。
今度こそ、魚月に声を会えると思ったのに。
俺は足早に駅に向かった。
電車に乗ってさっさと家に帰りたかった。
婚約破棄を言い出したのは魚月の方からだった。
理由はわかっていない。
翔太の女癖の悪さには驚いたが、それで婚約を破棄したとは言い難い。
だったら何で、こんな土壇場で婚約破棄なんかしたんだ?
あんなに両親を守りたがっていたのに。
愛のない結婚でも、両親の為にと必死だったのに。
駅のホームは仕事帰りのサラリーマンで溢れ返っていた。
ここは大きな街だし、駅のホームの人口だけでもすげぇことになっている。