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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音
確かに、ここ最近の俺は心ここに非ずだ。
魚月の婚約破棄の噂を聞いてから、上の空になることが多くなった。
諦めたはずの魚月への想いが日に日に強くなって行く。
会えない、叶わないと思えば思うほど魚月への想いは日増しに膨れていく。
自分でも止められなかった。

そして、ここへ来て魚月の婚約破棄…。
そりゃ上の空にもなっちまうさ。

「はぁ…」

大きな溜め息を付きながらパソコンの画面に目をやるが、集中なんて出来やしない。
早く仕事を進めなきゃなんねぇってのに、頭が回らない。

俺の頭の中に浮かぶのは…




"魚塚さん"




懐かしい魚月の声だけ。
魚月の声だけが頭の中で響いている。
目を閉じるだけで、一瞬で思い出せる。





「――――――――っ!」





と、ここまで考えて俺はハッと我に返った。

うっわ…、俺今マジで気持ち悪い事考えてた。
いくら何でも仕事中に考える事じゃねぇだろう。
自分で自分にドン引きしてる…。

これじゃまるで一人相撲だ。
勝手に魚月の事を思い出して、勝手に懐かしんで、勝手に興奮して…。
急に、周りで真剣に仕事をしてる同僚達に申し訳ない気持ちになった。

白昼夢より質が悪い。

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