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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音
いけね…、今はこんな妄想に耽ってる場合じゃない。
今は仕事に集中しなくてはっ。

俺は首を軽く左右に振り、両手で頬を挟むようにパチンッと叩いた。
しっかりしろ、と自分に喝を入れた。


しかし、神様からの悪戯や試練は止まらない。
どうやら俺を仕事に集中させる気はないようだ。



ブー…、ブー…、ブー…。



俺の内ポケットに小さく振動するスマホ。
この振動パターンからして、LINEやアプリのお知らせじゃない。
恐らく着信だ。
こんな平日の午前中に電話してくる相手なんて限られたお得意様だけだ。

俺は内ポケットに手を伸ばしスマホを取り出した。

誰だよ、この忙しい時に。
恐らくうちと契約してるお得意様だろうけど、こんな朝早くに何の用だ?
まさか、クレームとかじゃねぇだろうな…。



恐る恐るスマホの画面を見た。
電話相手の名前がスマホに表示されてる。
どこのお得意様だろうか、と名前を確認。



しかし、スマホに表示されている名前を見て心臓がドキリと跳ね上がった。
スマホに表示されていた名前は


『先輩』


―――――――――…っ!



そこに表示されていたのは先輩という文字だった。

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