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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音
先輩からの着信…。
こんな平日の真っ昼間に俺に電話をかけてくるなんて…。
先輩からの着信、用件があるとしたらそれは――――。




「すいません、ちょっとトイレ…っ」
「え?おい…っ?」

俺は周りの声も、上司の声も聞こえてないかのように部署を飛び出した。
トイレと嘘をついて部署を飛び出した。
あんな騒がしい部署で先輩からの電話に出られるかっ!
先輩からの着信に心を踊らせて俺は一目散にトイレへと走った。


落ち着け…。
もしかしたら、ただの仕事の電話かも知れない。
魚月とは全然関係のない話かも知れない。
これだけ期待して、やっぱり期待外れでしたということも大いに有り得る。
だが、心臓が言うことをきいてくれない。
変な期待が胸の中で暴れてる。





―――――――バンッ!

「はぁ、はぁ、はぁ…」

一目散にトイレに駆け込んだ俺は呼吸を整えて先輩からの着信に応答した。
焦る気持ちを押さえながら、微かな可能性を期待しながら。


「はぁ…――――――――もしもし…」
『あ、もしもし。由之?』
「は、はい」


先輩の声色は、慌てる様子もなくいつも通り冷静沈着だ。
こちらは動揺を悟られないように必死だというのに。

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