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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音
魚月…
魚月…っ。

何回夢で見た?
何回、会いたいと渇望した?
何回、お前を思い出した?

もう2度と会えないと、この手に触れられないと諦めていたのに
人のものになって行くお前をただ見ていただけなのに…


もう、誰に遠慮することなく、魚月に会いに行ける…っ。
誰に気を使うことなく、魚月を抱き締められる。
大声で「好きだ」と叫べる。

誰もが当たり前にしてる事が、こんなに嬉しく感じるなんて…。




俺は先輩に何度も礼を言って電話を切った。

「――――――――っ!」

電話を切った後でも、喜びが体から抜けない。
情けない事に、マジで泣きそうだ。

やっと…、やっと魚月に会える…っ。

そうとわかれば、こんな所でぐずぐずはしていられない。
早く部署に戻り、残りの仕事を片付けなくては。
業務が遅れて残業になるのだけは勘弁してもらいたい。

あぁ、マジで…、足に羽根でも生えたんじゃないかと思うぐらいに足取りも軽く感じる。
このまま、魚月のいるところまで飛んで行けそうなぐらいに。



神様。
俺はあんたの事なんか全然信用してなかった。
寧ろ自分の運命を呪ってあんたを憎んだ事もあった。
でも、今回ばかりはあんたに感謝したい。
少しばかりは、あんたの事を信用してもいいと思ったんだ。


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