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せめて、今夜だけ…
第24章 綻び
「お、お前なら…、好きな女と仕事、ど、どっち取る?」
「……は?」

ガキみてぇな質問に、質問してるこっちが恥ずかしくなった。
昔の俺なら間違いなく仕事を取っただろう。
でも今は…、仕事と即答出来ないくらいに大事なものを見つけてしまったのだ。

「まさか、お前そんな事で悩んでんの?」
「う、うるせぇよ…」

自分でも情けねぇよ。
社長賞をもらい、フランス本社へ行くチャンスを手にしたというのに、自分のプライベートは仕事みたいに決断出来ない。
いい答えが出せない。

しかし、桐谷からすれば俺が今抱えてる問題は取るに足らないことだろう。
桐谷はバカなところはあるが、決断力はしっかりしてる。
何が良くて何がダメなのかもちゃんとわかってる。

「その"好きな女"っていうのが彼女とかなら一緒に連れて行くかな。まぁ、プロポーズってことで。ははっ」
「プロポーズ?」

プロポーズ、か…。
確かに桐谷の言う通り、魚月を一緒に連れて行くという選択肢もある。
それが1番いい答えだと思う。

でももし、魚月に拒絶されたら?
婚約破棄を俺に言ってくれなかったのだから。

「でも、男なら夢の出世街道だしなぁ。ぶっちゃけ俺1人でもフランスに行くかな」


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